1.29 SMASH12 新宿FACE 観戦記(昼)

 今週の後半は風邪を引いてしまい、なかなか大変だった。アルコールを一滴も飲まなかった週なんて、しばらく記憶にないくらい珍しい。もう忘れかけてしまっているSMASH12&13の感想を書いておこう。

 今回のSMASHは、昼夜興業。つまり、昼にSMASH12が開催されて、夜にSMASH13が開催される。TNAのTVテーピングのようであり、単に外国人招聘選手のコストパフォーマンスを改善しているだけでもある。
 そして、夜のSMASH13が終わったあと、お客さん参加の打ち上げがあって、次の日は大阪で昼興行がある。選手は大変だ。おそらくスタッフはもっと大変だ。打ち上げ終わって深夜バスで移動だなんて、そうとうタフだよね。お風呂はどこで入り、化粧はどこで落とすんだろう。
 聞くところによると、知り合いの知り合いは、お客さんとして全てに参戦したそうな。すげーよマジで。

 で、いつもの観戦記という名の感想文。今回の見所は、なんといっても元WWEのDIVAでS.E.S(Straight Edge Society)だったセリーナの参戦。
 ※S.E.Sとは、ドラッグ・酒・たばこを一切禁じる、禁欲主義の集団。宗教的な意匠を施してある、なかなか斬新なチームだった。
 WWEでは、プロレスしているところをみたことがないから、どれくらいできるのか楽しみにしていた。いつもCMパンクのセコンドだったもんね。記憶に残っている技って、腹ばいになってる相手への蹴りくらい。ってか、そもそもセリーナは、観客からS.E.Sの儀式に参加して、そのまま出演し続けてたんだから、レスラーじゃないはずだ。DIVAではあっても。
 あと、忘れちゃいけいないのは、我らがスターバックが、マイケル・コバックへ借りを返すためのシングルマッチが組まれている。これは応援するしかない。

 開始10分前くらいに到着。ドリンク券をレモンハイに引き換えて着席。初めての東側だった。スクリーンは見にくいけど、リングは見やすい。SUNAHOの「あと3分で開始します」ってアナウンスは親切で良いね。客席は8割くらい埋まっていた。


■第一試合 AKIRA vs D-レイ 3000

 ワールドトライアウトマッチ。D-レイは、アフロっぽいヘアーにおでこが広く、皮のダウンベストみたいなのを着て登場。宣材写真も良くて、久々に、おもしろレスラーが来たかな、という期待感はあった。
 はじまって3分くらいで、たいしたことなさそうな空気が漂い始め、客席はなんとか盛り上げたいと思っていたはずだけど、特筆すべきムーブも飛び出さず、地味に終了。
 風貌がおもしろいだけの新人かと思いきや、本人のマイスペによると、11年のキャリアがあるらしい。あんまそんな感じしなかったなぁ……。


■第二試合 小路晃 vs 大森隆男

 小路はSMASH12、13、そして大阪大会を持ってプロレスから離れ、総合格闘技に戻るとのこと。こないだ鈴木みのるとの対戦で、鈴木が試合後にコメントしていた、総合と二足のわらじ云々……というのがハナから張ってあった伏線だったのだろうか?
 いや、そんなことはないか。ストレートに、小路がコメントをきっかけに自己を見つめ直したってことか。
 今回の試合も、一本足頭突きは重要視されず、繋ぎ技として使われたのみ。JCBに至る流れをなんだと考えているのだろう、小路は。
 特に噛み合うわけでもなく、ギクシャクするわけでもなく、感傷もなく、試合は終了。
 小路outの大森inであれば、SMASH全体としては、いい流れだと思う。30代後半の男性って、基本的に大森に肯定的なんだよね、なぜか。


■第三試合 リン・バイロン&児玉ユースケ vs 大原はじめ(FCF)&ジェシカ・ラブ(FCF)

 SMASH12では一番良かった試合。
 試合前は、きな臭いブログのエントリーで、「もしかして離脱?!」くらいに思ってたリンに注目していたけど、最終的に試合をもっていったのは、大原だった。
 試合展開としては、児玉のレッグラリアートで、大原が一瞬気を失っている隙に、リンと児玉がジェシカを二人がかりで攻撃し、蘇生した大原がブチ切れる、という流れ。
 ブチ切れた大原の攻撃が凄まじく、子どもが見たら泣いてしまうくらいの気迫だった。レスラーとしての格が一つ上がった感じ。昼興行特有の、観客が試合に集中しきれていないのも、この試合でグッと締まった。
 全試合終了後に児玉を見かけたら、首筋に痣ができていた。この試合でなったのかどうかはわからないけれど。


■第三試合終了後 トリプルテイルズ乱入

 さっきの試合でフォールを取られた児玉に怒って、リンが平手打ちをカマして先に帰り、リングに取り残された児玉。その状態で、無差別テロ予告をしていた華名、紫雷美央紫雷イオトリプルテイルズが乱入。
 とりあえず児玉をボコボコにして、マイクを持ってなんか言ってたら、TAJIRIが助けに来て、トリプルテイルズは退散、という流れ。観客は概ね静か。
 ポカーンとして静かだったというよりは、稚拙さが感じられてしまって、ノリきれなかったんだと思う。あとやっぱ、女性3人だから、あんまり説得力がないんだよね。TAJIRIと戦っても、勝てそうにないもん。マイケル・コバックあたりとチームを組めばよいのではなかろうか。
 僕は乱入大好きのアメプロっ子なので、トリプルテイルズSMASHにおける乱入文化の礎を築くくらいまで、めげずにがんばってほしい。アジテーションの技術は後からついてくるはず。


■第四試合 KUSHIDA va Mentallo

 若手とも中堅とも言えぬ、微妙な雰囲気の試合だった。クッシーはキャリアにしては、随分と上手い選手なんだと思うけど、それがどうも逆にはたらいている気がする。パラメーターが、10点満点で6点ばっかり、みたいな感じ。
 クッシーが今のままで、児玉がこの調子で成長すると、半年後くらいには児玉が勝ってもあんまり驚かないかもしれない。
 メンタロもそうなんだけど、プロレス好きがプロレスラーになってぶちあたる壁なのかな。ファミ通が、ファミ通で育った編集者ばかりになってつまんなくなったみたいな、そんなイメージ、とはちょっと違うか。
 日本人の、特にプロレスとか見てる人って、泥臭いストーリーだったり、努力が見えるのが好きだから、今のクッシーには厳しい状況かもね。


■第五試合 朱里 vs セリーナ

 休憩明けは、お待ちかねのセリーナ。入場は朱里が先。朱里の入場はだんだん良くなってきている。あと1年もしたら、入場だけで盛り上がる選手になるよ、きっと。
 セリーナは、CMパンク風の入場曲で登場。髪の毛があるから、やや違和感があった。それでも、雰囲気があるのが一目でわかる。
 試合内容はあまり記憶にない。朱里が勝てそうな場面は、一度もなかった。ハイキックが決め技というのを、早急に改善したほうがいいと思う。基本的に打撃技って、プロレスのカタルシスがないからね。TAJIRIのバズソーだったら、蹴る前の溜めがあるからいいんだけど。
 セリーナは組み合う前の構えが独特。なんかクネクネしてるんだ。


■第六試合 スターバック vs マイケル・コバック

 JCB大会でやられた恨みを、スターバックがどれだけ返せるかってとこに注目して見ていた。一方的にスターバックが攻撃して、最終的にコバックのセコい技でスリーカウント、みたいな展開かなと思っていたけど、ちゃんと一進一退の攻防になっていた。
 コバックはおっさんなんだけど、技はすべて現代的なものばかり。あまり緻密なプロレスをするタイプではない。セコいことしそうな風貌にもかかわらず、技はまっとう。キャラとレスリングスタイルは、そんなに合ってない。ってか、敵の本拠地に、仲間も連れてこずにたった一人で乗り込んでくるんだから、正々堂々としてるってことか。
 でも、最後はちゃんとセコく丸め込んで、コバックの勝ち。こういう勝ち方のできるレスラーは、いろんな意味で強いよね。
 どっちの良さも出た、なかなかの試合だったと思う。ただ、どっちつかずだった。スターバックがフラストレーションをためるわけでもなく、かといって発散できたわけでもなく。
 そう考えると、SMASH11でボロボロに負けた大原はいい仕事してたんだなー。


■第七試合 TAJIRI vs スペル・クレイジー

 FCF選手権試合。TAJIRIとクレイジーの抗争は、アメリカだと一つのブランドであり、それを超えなきゃいけない、とかなんとかTAJIRIのVTR煽りでのコメント。やたらとVで煽るときは、イマイチな内容で終わるというSMASHの過去事例通り、あまり盛り上がらずに終わった。
 クレイジーがハウスショーモードというか、ちょくちょく遊びを挟んでくるせいで、最後までタイトルマッチの緊張感が出なかったように思う。クレイジーなりのサービスというか、試合のスパイスなんだろうけど、うまく観客のニーズを掴みきれなかった。僕はもっとシリアスな闘いが観たかったな。


 ってことで、昼は終了。メイン以外のストーリーが、もっとがんがん動いていってほしい。対決の目新しさだけじゃ、1年目のSMASHを超えるのは、なかなか難しいんじゃなかろうか。
 その点では、大原&ジェシカのタッグや、リンと朱里の関係がどうなっていくのかなど、種は蒔かれ始めているので、きちんと追っかけたい。